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東京地方裁判所 昭和44年(特わ)568号 判決

本店所在地

東京都中野区弥生町二丁目四二番七号

株式会社・栗橋ブラザース

右代表者代表取締役

栗橋正男

栗橋益次郎

本籍

東京都新宿区新宿三丁目二一番地

住居

同都杉並区下高井戸四丁目二一番五号

会社役員

栗橋正男

昭和五年一一月五日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官秋田清夫、弁護人塚田善治出席の上審理して、次のとおり判決する。

主文

被告会社を罰金七〇〇万円に

被告人栗橋正男を罰金一四〇万円に

各処する。

被告人栗橋正男において右罰金を完納することが出

来ないときは、金二、五〇〇円を一日に換算した期

間労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社株式会社栗橋ブラザースは、東京都中野区弥生町二丁目四二番七号(ただし、昭和四二年六月一日住居表示実施前は同区本郷通り二丁目四六番地)に本店を置き、食糧品・衣料品・日用雑貨・薬品化粧品・煙草等の販売を営業目的とする資本金三〇〇万円の株式会社であり、被告人栗橋正男は、右被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄していたものであるが、被告人栗橋は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金を蓄積する等の不正の方法により所得を秘匿したうえ

第一、昭和四〇年八月一日から同四一年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八、五五九万一、三二九円あつたのにかかわらず、同四一年九月三〇日同都中野区中野四丁目九番一五号(ただし、四二年六月一日住居表示実施前は同区囲町二番地)所在所轄中野税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四、三一五万四、七六七円で、これに対する法人税額が一、四九四万二、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額三、〇二一万九、二〇〇円と右申告税額との差額一、五二七万六、四〇〇円を免れ

第二、昭和四一年八月一日から同四二年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六、〇〇一万三、一〇三円あつたのにかかわらず、同四二年九月三〇日前記所轄中野税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二、四三四万一、二二一円でこれに対する法人税額が七九六万四、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額二、〇四四万八、一〇〇円と右申告税額との差額一、二四八万三、八〇〇円を免れ

たものである。(各年度における所得金額の確定内容は、別紙第一、第二の各修正損益計算書記載の税額の計算については別紙第三、第四記載のとおりである。)

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の上申書八通及び大蔵事務官に対する質問てん末書五通

一、被告会社に関する登記簿謄本

一、田中猶司の大蔵事務官に対する質問てん末書二通

一、小林礼子の検察官に対する供述調書

一、栗橋益次郎の検察官に対する供述調書

一、柴山猛の上申書一一通及び検察官に対する供述調書

一、柳沢忠幸の電話聴取書

一、大蔵事務官神山貞一の証明書

一、大蔵事務官岩城忠頼(以下同様)の簿外売上調査書

一、償還益等調査書

一、簿外有価証券調査書

一、簿外預金利息調査書

一、簿外預金調査書

一、銀行調査書

一、事業税調査書

一、押収してある以下の証拠物件(いずれも当庁昭和四五年押第三九八号、以下の数字はその符号番号)

1  経責明細帳二綴

2  諸給与支払内記明細書二綴

3  税務関係書類綴一綴

4  税務関係綴三綴

5  法人税決議書綴

6  通知預金取引票

(法令の適用)

被告会社につき法人税法一五九条、一六四条一項、刑法四五条前段、四八条二項。

被告人栗橋につき法人税法一五九条(罰金刑選択)、刑法四五条前段、四八条二項、一八条。

(量刑の事情)

本件は各年度を通じ計画的な脱税事案であり、その逋脱額も二年度分合計二、八七六万円余りに達し、被告会社が当時納税義の誠実なる履行を約束した青色申告法人であることを考慮に入れふと、その罪責は軽くない。しかし、他方犯行の手口は単に売上の一部を除外して別口預金としたにとどまり、他に虚偽帳簿を作成する等の積極的な不正手段を購じたわけではなかつたし、被告人は、本件発覚後そつ直に非を認め、詳細な上申書を提出して真実の所得の計算に協力して行動によつて反省の実を示した。さらに、その後修正申告し、本件の各年度を含む過去五年分の法人税、事業税、都民税の関係諸税一億二、二六〇万三五〇円を納付し、この中には、本件各年度分の多額の重加算税(第一年度五二七万一〇〇円、第二年度三九〇万七、八〇〇円)が含まれていることの外、被告会社の経理状況、被告人の企業に対する勤勉等の情状を考慮し、ことに被告人に対しては、検察官所論の短期の自由刑に処するよりは、被告人の法人における地位、逋脱額等に相応した罰金刑に処するのが相当であると認めた。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 小島建彦)

別紙第一 修正損益計算書

株式会社栗橋ブラザース

自昭和40年8月1日

至昭和41年7月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙第二 修正損益計算書

株式会社栗橋ブラザース

自昭和41年8月1日

至昭和42年7月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙第三 法人税額計算書

事業年度

自昭和40年8月1日

至昭和41年7月31日

〈省略〉

別紙第三 法人税額計算書

事業年度

自昭和41年8月1日

至昭和42年7月31日

〈省略〉

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